大腸菌がいなければ食中毒を防げない

これらが腸内で異常に増えてしまうと、腸内環境はたちまち悪化します。腸内の内容物を腐敗させて硫化水素やアンモニアなどの腐敗物質をつくり出し、ガスや悪臭のもとを生成します。臭いオナラやウンコは、大腸菌が腸内で異常繁殖している証です。その有害物質が腸から体に入り込んで全身に回れば、細胞のがん化や老化を引き起こします。また、悪玉菌の中には、弱いながらも病原性を持つものもいます。こうしたことから乳酸菌飲料のメーカーなどは、「善玉菌を増やして悪玉菌を排除しよう」とさかんに宣伝して、悪玉菌をやり玉にあげては自社製品を売り込もうとします。しかし、私たちはこの誤った情報に飲み込まれてはいけません。悪玉菌に属する菌たちが腸内で悪さをするのは、異常繁殖したときだけです。

実際のところ、悪玉菌と呼ばれる菌たちは、異常繁殖したり、宿主の免疫力が著しく低下したりしていなければ、大きな悪さはしません。「チョイ悪菌」という名称がちょうどよいくらいです。実は腸の健康には「チョイ悪菌」の働きも大事なのです。腸内細菌は、縄張り争いをしながら腸内に存在しています。争うのは主に相反する働きの菌たちです。働きが正反対である善玉菌と悪玉菌は、腸内で拮抗しています。そんな細菌どうしの争いは、腸内環境において大きな意義があります。

たとえてみれば、子どもの成長のようなものです。子どもは競争のない環境では怠けて貧弱になりがちです。しかし、ライバルのいる環境では「負けてたまるか」と競争心が育まれ、その子を大きく成長させてくれます。また、みんながよい子では面白みのない教室も、チョイ悪の子が1人いるととたんに活発化します。

腸内細菌も同じです。善玉菌の働きを活性化させるには、ほどよくいたずらをしかけてくるような「チョイ悪菌」の存在が必要です。チョイ悪菌がいるから、善玉菌は縄張りを奪われてはならないとがんばるのです。反面、善玉菌と悪玉菌は、互いにエネルギーのやりとりをしていることもわかっています。

また、チョイ悪菌がよい働きをすることも多々あります。たとえば、悪玉菌の代表とされる大腸菌は、O-157やO-111などの病原性大腸菌が腸内に入ってくるといち早く動き出し、外敵の増殖を防ぐために働きます。大腸菌がいなければ、病原性大腸菌による食中毒は防げないのです。また、人が食べた野菜や果物などから、ビタミンを合成するという、大事な働きもしてくれています。

つまり、善玉菌がよい働きをするにはチョイ悪菌の存在が必要ですし、チョイ悪菌が悪さばかりしているわけではないのです。

チョイ悪菌を根っからの悪玉菌にしてしまうのは、実のところ宿主である私たちのふるまいにあります。とくに注意すべきは、食物繊維の不足です。食物繊維を主なエサとしているとき、チョイ悪菌は異常に増殖することはありません。チョイ悪菌が根っからの悪玉菌になるのは数が増えすぎて、腸内で優勢になったときです。それを許すのは、高糖質・高脂肪・低食物繊維という食生活にあります。「チョイ悪菌をオチャメな菌のままに保つには食物繊維の力が必要なのです。

食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があります。腸内細菌たちの大好物は水溶性の食物繊維です。ワカメや昆布、モズク、メカブなどの海藻類、ゴボウ、キャベツ、オクラ、モロヘイヤ、カボチャなどの野菜類、納豆やきなこなどの豆類、アボカドやバナナなどの果物に豊富です。コンニャクもおすすめです。毎日、こうした食材を意識してとっておけば、チョイ悪菌が根っからの悪玉菌になることはありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です